川のある街

川のある街

江國香織

出版社:朝日新聞出版 出版年月日:2026/05/07

朝日新聞出版 | 2026/05/07

4.00
本棚登録:4人

みんなの感想

感想

川と人生の流れを巧みに重ねた作品だなと感じました。子どもの頃の望子が窓から眺める川の風景が、彼女の内面の変化を静かに映し出していく—その構成の上手さに引き込まれます。 離婚という人生の転機を経験した子どもの視点から描かれているのですが、決してセンチメンタルに陥らず、むしろ淡々とした語り口が印象的です。新しい環境での戸惑いや、父親との面会での複雑な思い、友人との関係—子どもにしか見えない世界の輪郭線がこんなに鮮烈に切り取られるんだと感動しました。 三つの異なる時間軸で、三つの街を舞台に人生を描くというコンセプトも洗練されていて、全体として統一感があります。「ささやかで特別な瞬間」という表現が本当にそのままで、誰もが経験しているはずなのに、ふと見落としている大切なものが何かを静かに教えてくれる。 慎重に本を選ぶ私ですが、このような丁寧な筆致の小説は外れが少ないと感じます。特に人生の中で何か区切りを迎えている人や、日常の中の美しさを再発見したい人に、そっと手渡したい一冊です。

感想

わかるなあ、っていう感覚を文章にするのがすごく上手だなと思った。 最後の解説で、「曖昧なことを曖昧なまま伝えたい」という発言に納得した。 題材が川だったのもあると思うけれど、スッキリするような、西陽があたるような気持ちになれた。でも100パーセントそうなわけではなくて、カネコアヤノの歌詞を借りるけど、西陽が当たるだけで泣きそうになる、という表現が自分の中でベストだ。 定期的に読み返してこの感覚を補給したい。 あと、青葉市子を聴きながら読むのが最高だった。

感想

人生の大切な場面って、大概は静かなものなんだと改めて感じさせてくれた一冊です。 主人公の望子が川の見える窓から眺める景色と、彼女自身の心の変化がそっと重ねられていく。両親の離婚という人生の転機を経験しながらも、新しい友達との出会いや父親との時間の中で、少しずつ自分の足場を作っていく。その過程が本当に丁寧に、優しく書かれています。 特に良かったのは、派手な事件や劇的な出来事がないのに、読み終わった後にじんわりとした充足感が残ることです。川の流れのように、時間が静かに流れていく中での小さな喜びや切なさが、まるで自分の経験のように感じられました。大人になった今だからこそ、子どもの視点から世界がどう見えているのか、その透明さに引き込まれました。 会社での日々の中で、こういった深い物語に触れるとリセットされるような気がします。仕事が忙しい日常だからこそ、こういった静かで味わい深い作品は本当に必要だなって思います。手に取りやすい文庫本という形も、気軽に何度も読み返せて良いですね。

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