粉瘤息子都落ち択

粉瘤息子都落ち択

更地 郊

出版社:集英社 出版年月日:2026/02/05

集英社 | 2026/02/05

4.33
本棚登録:5人

みんなの感想

感想

選評で複数の著名な作家が絶賛していたので、期待値を高めずに手に取りました。正解でした。 この作品は、一見すると退職した中年男性のだらしない日常を淡々と描いているだけに見えます。しかし読み進むにつれ、その描写の細やかさと、主人公が抱える葛藤の深さに引き込まれていきました。パワハラによる退職、実家への責任感、友人との奇妙な関係—誰もが人生のどこかで感じたことのある息苦しさが、この作品には濃密に詰まっています。 管理職という立場から読むと、特に興味深い点があります。上司のパワハラシーンは描写されませんが、その後遺症ともいえる主人公の状態が、職場環境の問題がいかに深刻か物語っています。現代社会で働く人間の脆弱性と、それでも生き続けなければならない現実の重さが伝わってきます。 文体は軽妙で読みやすく、ゲーム対戦シーンや日常の散歩描写などが、単調に陥らない工夫がされています。笑える場面もあれば、ぐっとくる場面もあり、バランスの取れた構成だと感じました。 ただし、終盤への向かい方に少し物足りなさがあったため、満点ではなく4点としました。それでも、現代小説として十分な価値のある一冊です。

感想

マジで面白かった。この本、タイトルからしてなんか変だし、内容説明読んでも「え、これ何?」って感じだったんだけど、読み始めたらハマった。 主人公が引きこもってスト6やってマウンテンデュー飲んでるっていう、めっちゃ地味な日常が描かれてるのに、なぜか引き込まれちゃう。パワハラで退職して実家に帰らなきゃいけないのに帰れないっていう、なんとも言えない微妙な緊張感が常にあるんだよね。友人の忍との関係も面白いし。 ぶっちゃけ文学賞作品とか普段読まないんだけど、これはライトノベルとか漫画と違う面白さがある。地の文が自然だし、底辺青春小説って説明の通り、派手じゃないけど心に残る感じ。自販機での日常とか、メンクリとか、リアルな空気感がいい。 高専の勉強で疲れた時に読むのに最適。重くもなく軽くもなく、普通の感覚で読める。マジでおすすめ。

感想

選評で目にした金原ひとみ氏や岸本佐知子氏の言葉に惹かれて手に取った一冊です。正直、タイトルからは内容が全く想像できなかったのですが、その不気味さというか謎めいた感じが興味をそそりました。 読み始めると、引きこもり状態にある主人公・野中とその周辺の人間関係が、妙なリアリティを持って立ち上がってきます。パワハラ退職後の深い疲弊、友人からの奇妙な提案、九州の実家の事情——これらが絡み合う中で、一見つまらなそうな日常風景が、実は極めて濃密で切実なものとして描かれているんです。 新社会人として働き始めた自分にとって、この作品の「底辺」というテーマは決して他人事ではありませんでした。職場での人間関係、人生の選択肢、親への罪悪感——そうした重いものが、ゲームや自販機での散歩といった軽やかな日常に静かに層積されていく構成が秀逸です。 ただ、展開が予測しにくい部分があり、時々置き去りにされる感覚も覚えたので、すんなり読み進められるタイプの小説ではありません。それでも、本当に久しぶりに「読む快楽」を感じられた、選評の言葉通りの体験ができました。

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