ジョギング妻のしずく

ジョギング妻のしずく

草凪優

出版社:竹書房 出版年月日:2018/04/01

竹書房 | 2018/04/01

4.33
本棚登録:6人

みんなの感想

感想

最近、ビジネス書や思想書ばかりに偏っていた読書生活に刺激が必要だと感じていたのですが、この作品はまさに予想外の面白さでした。 人生の転機を迎えた中年男性が、ジョギングという地味な習慣から人生を変えていく過程が、実は私たちが直面する人間関係や自己再生のテーマと通じているんですね。単なるエロティック小説にとどまらず、四十代という人生の折り返し地点での葛藤や新たな可能性への目覚めが丁寧に描かれています。 職場での疲弊と家庭での停滞感から抜け出そうともがく主人公に、思わず応援したくなってしまいました。管理職という立場で日々プレッシャーの中にいる自分だからこそ、彼の「もう一度人生を歩み直したい」という願いが切実に響きます。 軽く読めるエンタメ小説としての楽しさと、人間関係の機微を描く文学的な側面が巧妙に組み合わされているところが、この作品の秀逸さだと思います。息抜きと思索のバランスが取れた、大人の読書として丁寧に仕上げられていました。話題作として納得できる一冊です。

感想

話題作ということで手に取った一冊だが、予想外の面白さに引き込まれてしまった。中年男性の再出発という普遍的なテーマを、ここまで大胆に、そしてユーモアを交えて描いた作品は珍しい。 主人公・幸四郎は妻との不仲で東京に単身赴任した、いかにも地味そうなサラリーマン。その彼がジョギングをきっかけに人生が変わっていく。この設定だけで既に興味をそそられるのだが、物語の進め方が実に巧妙だ。単なるエロス小説に陥らず、男としての自信の喪失と回復というテーマを丁寧に描きながら、読み手を引き込んでいく。 58歳の身としては、主人公の年代と重なる部分があり、より一層感情移入できた。人生の折り返しで自分を見つめ直す機会は誰にでもあるもの。この作品はそうした中年男性の心理を、深刻に陥らず、むしろ希望と可能性を感じさせる形で表現している点が素晴らしい。 軽妙な筆致でありながら、人間の根源的な欲求や孤独感に真摯に向き合う。竹書房らしい独特の魅力を存分に味わえた一冊である。同世代の男性にこそ、ぜひ読んでいただきたい。

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