私の大阪八景

私の大阪八景

田辺 聖子

出版社:KADOKAWA 出版年月日:2017/08/25

KADOKAWA | 2017/08/25

4.50
本棚登録:6人

みんなの感想

感想

最近話題になっていたこの作品、ついに手に取りました。昭和初期の大阪を舞台にした温かみのあるエッセイだと思っていたのですが、読み進めるにつれて、その奥深さに引き込まれてしまいました。 日常のささやかな風景描写——ラジオ体操、銭湯、唱歌——一つひとつが本当に丁寧で、当時を生きた人たちの息遣いまで聞こえてくるようです。何気ない日々のなかに戦争という時代背景が静かに、しかし確実に影を落としているところが、この本の最大の魅力だと思います。 特に印象深かったのは、男女の人生観の違いについて書かれた部分です。55年生きてきた私だからこそ、その率直で痛切な指摘に胸が痛みました。文学的な美しさと社会的な鋭さが両立しているって、こういうことなんだと。 文庫本というお手ごろな形態も嬉しい。身近に置いて、何度も読み返したくなる一冊です。同年代の女性たちにもぜひ読んでほしいと思いました。

感想

昭和初期の大阪を舞台にした短編集です。管理職として日々の決断に追われる私にとって、この作品は予想外の深さと説得力を持っていました。 各編に描かれるのは、一見ささいな日常の風景。ラジオ体操、銭湯での会話、子どもたちの遊びといった情景ばかりです。しかし、その静かな描写の奥底に確実に戦争が蔓延している。表面的には見えない社会の矛盾や、特に女性たちに押し付けられた不可視の抑圧が、じわじわと心に響きます。 著者の観察眼は実に鋭く、時代背景を丹寧に積み重ねることで、歴史の重さを感じさせます。私のような管理職の立場からも、権力構造や不平等さについて改めて考えさせられました。 文庫本という手軽さも相まって、忙しい日々の中でも少しずつ読み進められる点も良かった。決してエンタメ性は高くありませんが、言葉選びの丁寧さと構成の緻密さに、何度も手を止めて考え込んでしまいました。歴史エッセイのような味わいながら、文学の力を感じさせる傑作だと思います。

ブクログからブクマへ
かんたん引っ越し

読書記録や感想をそのまま移行。
数分の準備で、ブクログの本棚をブクマへ。

詳しく見る
ブクログからブクマへの引っ越しイメージ