テミスの不確かな法廷

テミスの不確かな法廷

直島 翔

出版社:KADOKAWA 出版年月日:2025/11/25

KADOKAWA | 2025/11/25

4.25
本棚登録:4人

みんなの感想

感想

話題のこの作品、ようやく手に取る機会に恵まれた。発達障害を抱えながら裁判官という職に身を置く主人公・安堂清春という設定だけで、すでに興味をそそられていたが、読み始めると予想以上に引き込まれた。 裁判という法廷という舞台を通じて、人間関係の齟齬、コミュニケーションの難しさ、そして「生きづらさ」というテーマが丁寧に紡ぎ出されている。事件の真実を追求する過程で、安堂自身の内面も徐々に明かされていく構成は見事だ。複数の短編から構成されているため、単発の事件を追うだけでなく、キャラクターの深さを味わえるのが魅力である。 岩波明による解説も秀逸で、医学的観点から登場人物の心理状態を読み解く視点が得られ、小説の奥行きが一層深まった。今の時代だからこそ、多様性や発達障害への理解がテーマとして必要とされているのだろう。法律知識がなくても楽しめる娯楽性と、社会的な問題提起を両立させた良質なリーガルミステリだと感じた。

感想

仕事の休憩時間にちょっと読める本を探していて、この本に手を取ってみました。発達障害を持つ裁判官が難事件に向き合うというユニークな設定に惹かれたんですが、読み終えて思うのは「まあ、こんなものかな」という感じです。 短編集の形になっているので、気軽に読み進められるのは良いところ。医療現場での経験からか、登場人物の心理描写や生きづらさへの向き合い方には共感できる部分も多くありました。主人公の清春が自分の特性と向き合いながら事件に取り組む姿勢は悪くないんです。 ただ、どの話も中途半端な感じが否めません。もう少し掘り下げがあれば、より心に残る作品になったのではないかと思います。ミステリとしての謎解きの部分も、そこまで複雑ではなく、さらりと読めてしまう。気軽に楽しみたい読者にはいいかもしれませんが、個人的には少し物足りなさが残りました。 医療に関わる身としては、こういった視点の作品は今後も読んでみたいと思いますが、この一冊に関してはいい意味でも悪い意味でも「無難」という印象です。

感想

話題のリーガルミステリということで手に取りましたが、期待以上の面白さです。発達障害を持つ裁判官・安堂清春が主人公というだけで興味深いのに、彼が事件の本質を見抜いていくプロセスが本当に秀逸。 公務員として日々判断を迫られる身なので、安堂が「生きづらさ」を抱えながらも職務に向き合う姿勢に、ついつい感情移入してしまいました。彼の独特な視点だからこそ気づける事件の真実という構成も上手い。 各章ごとに異なる事件が描かれますが、どれも単なるミステリではなく、人間関係の複雑さや社会的な歪みが丁寧に織り込まれている。微笑みながら殺人を告白する教師の話など、読んでいて本当に心が揺さぶられました。 何より、発達障害という題材を扱いながらも、ステレオタイプに陥らず、一人の人間として安堂を描いているところが素晴らしい。話題作として話題作として終わらない、深みのある作品です。文庫版も手に取りやすく、ぜひ多くの人に読んでほしい一冊。

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