自己との対話 社会学者、じぶんのAIと戦う

自己との対話 社会学者、じぶんのAIと戦う

吉見 俊哉

出版社:集英社 出版年月日:2025/12/17

集英社 | 2025/12/17

3.50
本棚登録:6人

みんなの感想

感想

AI時代において人間の本質的価値とは何か——この根源的な問いに真摯に向き合った一冊として、本書は非常に示唆的だった。 吉見俊哉が自身の著作を学習させたAIと対話するという斬新な試みは、単なる奇抜な企画ではなく、社会学という学問の本来的な営みを浮き彫りにしている。AI「吉見くん」との問答を通じて、創造的思考、文脈の理解、歴史的洞察といった人間特有の知的営為がいかに貴重であるかが明らかになる。 新社会人として働き始めた今、AI時代における職業人としてのあり方を考える上で、本書の議論は極めて実用的だ。決してテクノロジーの脅威論に陥らず、人間にしかできない思考様式を丹念に掘り下げるその姿勢が素晴らしい。 短編ながら密度の高い思考が凝縮されており、読むたびに新しい視点が得られる。社会や教育、都市といった多岐にわたるテーマも扱われているため、人文系の関心が深い読者にとっては非常に価値のある作品である。現代を生きるための知的指標となる一冊だ。

感想

AI時代の教育現場で働く身として、この本のコンセプトには大いに興味を惹かれました。自分の著作をすべて学習させたAIとの対話という試みは、確かに時宜を得た題材です。しかし読み進むうちに、やや肩透かしを食らった感が否めません。 対話の内容自体は興味深いのですが、AIがどの程度まで「吉見俊哉らしさ」を再現しているのか、その検証が十分でないように感じました。人間にしかできないこととは何かを問う序盤の意図は良いものの、結論へ至るプロセスが少々甘いというか、踏み込み不足の印象です。 特に教育者の立場から見ると、学生たちが今まさに直面しているAIとの向き合い方について、もっと具体的で実践的な示唆があればと期待していました。新書という限られた紙幅とはいえ、社会学的視点からの洞察が、やや理想論に終始しているように思えます。 話題の本を追うべき立場ではありますが、この一冊に関しては、批評的に距離を置いて読むことをお勧めします。

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