夏と花火と私の死体

夏と花火と私の死体

乙一

出版社:集英社 出版年月日:2000/05/01

集英社 | 2000/05/01

4.00
本棚登録:4人

みんなの感想

感想

妻が図書館で借りてきた本で、どんな内容か半信半疑で手に取ったのですが、一気に引き込まれてしまいました。これは乙一という若い才能あふれた作家のデビュー作だそうですね。 正直なところ、タイトルだけ見ると怖い話なのかと躊躇していたのですが、読んでみると単なるホラーではなく、不思議な詩情と哀しさに満ちた物語でした。少女の視点から語られる、非日常の中での兄妹の関係性が細やかに描かれており、読むたびに心がざわつきます。 文庫本ということもあり、手軽に読める長さながら、その内容の濃さには驚きました。構成が巧みで、読み進むにつれて物語の仕掛けが明かされていく快感があります。七十代に近い私のような読者にとっても、こうした新しい表現手法の小説は非常に刺激的です。 もう一度読み返したくなる、そういう味わい深さがある。若い世代だけでなく、人生経験を積んだ世代にも心に残る作品だと思います。文庫化されて手に取りやすくなったのは本当によかった。

感想

エンジニアとして論理的思考に慣れた身としては、この作品の構成の巧妙さに思わず引き込まれました。死体という衝撃的な設定から始まりながら、徐々に明かされる真実の層の深さが秀逸です。 乙一のデビュー作とのことですが、まず驚くのは独特の語り口。一人称で語られる物語なのに、その視点の揺らぎが意図的に計算されているのが感じ取れます。エンジニア的に言えば、ロジックが完璧に組み立てられているのです。 内容はホラー要素を含みながらも、兄妹の関係性という人間ドラマが軸になっており、単なる怖さだけではない深い余韻が残ります。九歳の夏という限定的な時間軸設定も効果的で、その中に凝縮された物語の密度が高い。 ただ慎重に言うと、一部グロテスクな表現があるため、気になる方は事前に了解が必要かもしれません。文庫化されているので読みやすいですし、小野不由美の解説も本作の理解を深めます。 エンジニアの視点でも、文学的価値でも、どちらの角度からも楽しめる傑作だと思います。

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