いい子のあくび
集英社 | 2023/07/05
みんなの感想
芥川賞受賞作ということで、期待値を高めながら手に取りました。正直なところ、最初は「自分には難しいのではないか」と少し構えていたのですが、読み進むうちにぐっと引き込まれました。 表題作「いい子のあくび」の主人公に、思わず共感してしまいました。管理職として多くの調整役を担ってきた自分自身と重ね合わせてしまったのです。「いいこと」をするのが当たり前になっていく過程で、その不均衡に気づきながらも、どうしても行動を改められない-そうした息苦しさが丁寧に描かれています。 収録作品全体を通じて感じるのは、著者の観察眼の鋭さです。日常のささいな場面に隠された違和感や不条理を、静かに浮かび上がらせていく手法が秀逸。派手さはありませんが、その分、読み終わった後に心にじんわりと残る作品ばかりです。 ただし、主人公たちの閉塞感が色濃い作風なので、明るい話が読みたい時には向かないかもしれません。自分のペースで、落ち着いた時間に読むことをお勧めします。大人の読者だからこそ味わえる、良い一冊だと思いました。
芥川賞受賞第一作ということで、どんな作品だろうかと手に取ってみました。読み始めたら、もう一気です。 「いい子」でありながら、その善行が報われないことへのモヤモヤ感。著者がこんなにも上手に言語化してくれるなんて。まさに自分たちの世代が感じてきた「割りに合わなさ」ですよ。仕事でもプライベートでも、気遣いばかりしてきた女性たちの心の声が、これでもかと綴られています。 特に印象的だったのは、表題作の歩きスマホのくだり。なぜか自分だけがよけ続ける、その理不尽さときたら。思わず「そうそう!」と頷いてしまいました。結婚式についての違和感の描き方も秀逸で、世間一般の「めでたい」という価値観に疑問を投げかける視点が新鮮でした。 短編を通じて、社会に適応しながらも違和感を抱え続ける女性たちの息遣いが聞こえてくるようです。同世代の読者なら確実に共感できる一冊。最近話題の著者だからこその視点と表現力だと感じます。
芥川賞受賞第一作ということで、話題になっているこの作品をようやく手に取りました。 「いい子」として生きることの息苦しさ、そしてそこに潜む違和感。表題作を始めとした短編集なのですが、どの作品も日常の中に隠れた不協和音を見事に浮き彫りにしています。特に印象的だったのは、著者が「人より少し先に気づくタイプ」と自認するキャラクター造形です。良いことをするのに躊躇がないのに、その行為が「割に合わない」と感じてしまう主人公たち。その複雑な心理状態がリアルに描かれている。 41歳になると、仕事でも人間関係でも「いい人でいること」の疲労感が身に沁みます。それを言語化し、ユーモアを交えて描いた著者の視点は秀逸だと感じました。ただ、短編集という形式上、若干の物足りなさは残ります。深掘りしたいと思わせる作品が多いぶん、もう少し長くても良かったかなと。 それでも、現代を生きる私たちの違和感を鮮やかに切り取った傑作だと思います。話題作の評判に納得できた一冊です。
芥川賞受賞作ということで、ちょうど話題になっている時期に読んでみました。正直、この「割りに合わなさ」の感覚がすごく刺さりました。 自営業をしていると、どうしても「いい顔」をしなければならない場面が多くて。でも読んでいて思ったのは、著者が描いている「いい子」って、実は一種の自己防衛なんじゃないかということ。無意識にそうしちゃう、というその感覚が、すごくリアルに伝わってくるんです。 収録されている複数のエッセイを通じて、日常のちょっとした違和感や不満、そして理不尽さが積み重なっていく様子が丁寧に描かれています。大きな事件が起こるわけではないのに、読んでいるとモヤモヤした気持ちが残る。それが狙いなんだろうなと感じました。 社会人として、そこそこうまくやれている自分だからこそ、この本で指摘されている「本当は疲れているのに、それを認められない」という葛藤がよくわかりました。話題作として読む価値は十分にあります。