何者
新潮社 | 2015/06/26
みんなの感想
就活という時間軸を通して、若者たちの本音と建前の葛藤を描いた作品です。SNSでの発言と実際の想いのズレ、面接での自分演出——その違和感は、同じ年代としてすごく共感できました。 ただ、正直なところ、読んでいて「なるほどな」と思いつつも、心に深く刺さるほどではありませんでした。登場人物たちの心理描写は丁寧なんですが、複雑すぎて、時々誰が何を考えているのか追いきれなくなるんです。漫画やラノベばかり読んでいるからかもしれませんが、もう少しキャラクターへの感情移入がしやすいと良かったな、という印象です。 内容としては、直木賞受賞作というだけあってちゃんと読む価値はあります。就活を控えた大学生には特に、自分たちの問題を客観的に見つめるきっかけになるかもしれません。でも、期待値が高すぎたのか、読んだ後の満足度は中程度といった感じです。無駄ではないけど、心から「みんな読むべき!」とは言いにくい、そういう一冊ですね。
就活という誰もが通る通過点を舞台にしながら、ここまで深く「自分とは何か」という問いを掘り下げた作品は珍しいと思います。 5人の登場人物たちが、SNSで演じられた自分と面接での自分、そして本当の自分との間で揺らぐ様子が、本当に丁寧に描かれています。フリーランスの自分も、キャリアについて何度も立ち止まることがあるので、この物語の中で彼らが感じるモヤモヤした違和感がとても他人事とは思えませんでした。 特に印象的だったのは、著者が言語化することの難しさをきちんと認識している点です。就活の「正解」を求める社会的プレッシャーの中で、自分たちの本音がどんどんズレていく過程が、ほぼセリフのみで表現されているのに、その心理が明確に伝わってきます。 ページをめくる手が止まらなくなる面白さというより、読み終わった後に「この話、登場人物たち今どうしているんだろう」と考え込んでしまう、そういう質の高さがあります。直木賞受賞の理由がよく分かりました。迷ったら読んで損のない一冊です。
話題になっていた本書をようやく手に取りました。就職活動という人生の岐路に立つ若者たちを通じて、現代人が抱える本当の姿が浮かび上がる——その構図の巧みさに引き込まれました。 管理職として多くの部下と関わる立場にある私にとって、特に印象的だったのはSNSや面接という「選別される場」での言葉と本心のズレを描く部分です。誰もが何らかの「演技」をしながら社会を渡っていることを、きわめてシニカルに、しかし本質的に問い直している。自分たちの会社でも同じことが起きているんだろう、と思わず考えさせられました。 5人の登場人物たちの相互作用も見事です。共同生活という密度の濃い関係の中で、自意識と本音がぶつかり合う様子が、まるで自分たちが当事者であるかのような臨場感で綴られています。世代は異なりますが、人間関係の機微を読む喜びは年代を超えるのだと改めて実感しました。 受賞作の名に違わぬ傑作。現在進行形で働く大人にこそ、読む価値のある一冊だと思います。
直木賞受賞作ということで、期待を持って手に取りました。就活を控えた若者たちがSNSと現実の狭間で葛藤する様子を描いた作品ですが、正直なところ、読み進めるのに少し疲れてしまいました。 登場人物たちの自意識の描写は確かに巧みなのですが、その分、彼らが皆どこか不誠実に見えてしまい、応援したくなる気持ちが湧きません。SNSの発信と本音のズレを題材にするのは現代的で興味深いのですが、話が進むにつれ、その葛藤がやや繰り返しに感じられました。 64年生きてきた身としては、若い世代の複雑さは理解できるつもりですが、この小説を通じて何か大切なことを学べたかというと、疑問が残ります。受賞作だからこそ、もっと心に響く何かがあるのではないかと期待していたのに……。文章の力は確かですが、内容の深さという点では、私の好みには合いませんでした。