マカン・マラン

マカン・マラン

古内一絵

出版社:中央公論新社 出版年月日:2025/11/20

中央公論新社 | 2025/11/20

3.50
本棚登録:2人

みんなの感想

感想

ドラァグクイーンが営む夜間営業の店で提供される料理を通じて、人生の機微を描く作品。話題性の高さに引かれて手に取りました。 各エピソードに登場するキャラクターたちは確かに魅力的で、それぞれが抱える悩みや葛藤は現代人の我々にも共鳴するものがあります。仕事に打ち込む女性、親子関係に悩む少年など、読み進めるうちに彼らへの思いが募ります。 ただ率直なところ、物語としての奥行きにやや物足りなさを感じてしまいました。各話が短編集という構成のためか、キャラクターの内面描写が浅く、一種の「いい話」で完結してしまう傾向があります。人生経験を重ねた身としては、もっと人間関係の複雑さや葛藤の深さを期待していたのです。 それでも、表紙帯にある「前へ進もうとしている証拠よ」というメッセージには惹かれます。優しさに満ちた世界観は確かに好ましい。文庫化されて手に取りやすくなったという点も含め、話題の一冊として読む価値はあると思います。万人受けする作品ではありますが、深い感動を求める読者には物足りないかもしれません。

感想

文庫化を機に手にしてみた一冊です。ドラァグクイーンのシャールが営むお店の話と聞いて、最初は正直どんな内容なのか見当がつきませんでしたが、読んでみるとこれが実にいい。 四つの物語それぞれに登場する人物たちが、みんな何かしら心に抱えているんですね。仕事に疲れた女性、親子関係に悩む少年、いろいろ。そこへシャールが用意する料理がね、ただ食べ物ではなく、その人その人に必要な何かを運んでくるような感じなんです。 説明文にもありますが「苦しかったりつらかったりするのは、ちゃんと考えて前へ進もうとしている証拠」という言葉。これは人生経験を重ねた身には、改めて胸に響きました。何も悩まず楽なだけが良いわけじゃない、そういう当たり前のことをあらためて思い出させてくれる。 気軽に読める小説として、でもどこか心が温まるものとして。素敵な作品です。

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