幸せな結末 大滝詠一ができるまで

幸せな結末 大滝詠一ができるまで

萩原 健太

出版社:文藝春秋 出版年月日:2026/03/12

文藝春秋 | 2026/03/12

4.33
本棚登録:5人

みんなの感想

感想

大滝詠一という人物に対して、どこか距離感を持っていた自分が、この本を読んで考え方が変わりました。 音楽業界の人間ではない私でも、彼の創造性の源泉がどこから生まれたのかが、丁寧な筆致で伝わってきます。学芸会での主役経験から始まり、少年時代の一目惚れ、細野晴臣との出会い——一つ一つのエピソードが有機的に繋がり、やがて「幸せな結末」という作品へと至る。その道筋が見事に描かれています。 特に印象的だったのは、アメリカン・ポップスへの深い愛情と、それが如何に彼の美学を形成したかという部分です。管理職として判断や決断を求められることが多い身ですが、こうした一貫性と信念の持ち方は、職業を問わず学べるものがあります。 遺作というだけでなく、一人の人間の人生そのものが音楽と結びついていく様子を読むと、人生の充実とは何かを改めて考えさせられました。慎重に本を選ぶ私でも、躊躇なくお勧めできる一冊です。

感想

大滝詠一という音楽家のことを、正直なところここまで深く知りませんでした。この本を読んで、彼がいかに音楽を愛し、細部にこだわる完璧主義者だったのかが伝わってきます。 特に印象的だったのは、少年時代から一貫して音楽と向き合う姿勢が描かれている点です。野球帽の手描きマークやパソコン通信への夢中さといった小さなエピソードの積み重ねが、後の音楽活動にどうつながっていくのかーー物語として実に巧妙に構成されています。教壇に立つ身として、創作活動における「完璧さへの執着」と「遊び心」のバランスについて、あらためて考えさせられました。 遺作という性質上、本人の言葉がふんだんに引き出されているのも魅力です。アメリカン・ポップスへの原点回帰という人生の転換点も、時代背景とともに丁寧に描かれており、昭和の音楽シーンを知る世代にとって実に読み応えがあります。ただ、若干の冗長さを感じる部分もあり、もう少しコンパクトにまとめられたら完璧だったかなというのが率直なところです。

感想

大滝詠一という音楽人の軌跡を辿るこの本は、実に読み応えがあった。若き日の少年時代から晩年まで、その創造の源泉がどこにあったのかが手に取るようにわかる。 特に印象的だったのは、彼がいかに一途に音楽と向き合ってきたかという点だ。野球帽を自分で手描きするほどの几帳面さ、そして一目惚れから始まった一生の恋。こうした細部の描写が、単なる音楽家の伝記ではなく、一人の人間の人生ドラマとして立ち上がっている。 管理職という立場で多くの人間関係に揺さぶられる日々を過ごしている身からすると、彼が「ナイアガラ・レーベル」という自分の世界を築き、アメリカン・ポップスという原点に回帰していく姿勢には、どこか共感するところがある。完璧さを求める執着、それでいて人を喜ばせたいという想い。 遺作として世に出たこの本だからこそ、読者は彼の全体像を俯瞰できるのだろう。人生後半へさしかかった今だからこそ、響く言葉や場面がたくさんあった。

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