精選日本随筆選集 歓喜

精選日本随筆選集 歓喜

宮崎 智之

出版社:筑摩書房 出版年月日:2026/02/12

筑摩書房 | 2026/02/12

3.75
本棚登録:4人

みんなの感想

感想

装幀の美しさに惹かれて手に取った本でしたが、期待と現実のギャップに少々がっかりしてしまいました。 「歓喜」というテーマで、薄田泣菫から開高健まで、時代を代表する筆者たちの随筆が集められています。個々の作品の質は確かに高く、薄田泣菫の深い思考や向田邦子の温かい視点など、素晴らしい一編も含まれています。 ですが、全体として読み進めるうちに違和感を覚えました。「歓喜」という統一テーマにもかかわらず、各作品の「歓喜」の定義や表現が大きく異なるため、アンソロジーとしての一貫性に欠けているように感じます。編者の意図は理解できますが、ページをめくるたびに話題が散らばり、集中力を要します。 また、掲載作品の紹介文が簡潔すぎて、どの随筆がどのような「歓喜」を描いているのか事前に判断しにくいのも困りました。慎重に本を選ぶ私にとっては、もう少し丁寧な案内があれば助かったところです。 文庫本という手軽さは良いのですが、正直なところ、この編集方針なら単行本で著者ごとに深掘りする方が、より充実した読書体験ができたのではないかと思います。

感想

仕事で論理的な思考に頭を使い続けているからこそ、一人称でそっと誰かの内面に寄り添う随筆という形式が好きです。この本は薄田泣菫から開高健まで、時代を超えた9人の著者による「歓喜」をテーマとした作品集ですが、編者の慎重で丁寧な選書が随所に感じられます。 驚いたのは、歓喜の現れ方がこんなにも多様だということです。激しく跳ね上がるような喜びもあれば、静かに心に沁みこむような歓喜もある。エンジニアの仕事では正解と不正解がはっきり分かれることに慣れているので、こうした曖昧で繊細な感情の世界を言葉で表現する力は本当に興味深い。 装幀も美しく、文庫本とは思えない質感です。編者が古書店で出会った美しい本との出逢いをきっかけにこの本を作ったというエピソードも信頼感につながりました。じっくり時間をかけて、繰り返し読みたいと思わせる一冊です。

感想

最近、良い随筆集との出会いを探していたところ、この本に辿り着いた。「歓喜」というテーマで薄田泣菫から開高健まで、時代を超えた名随筆を集めた編集に惹かれて手に取ってみた。 読み進むうちに気づくのは、歓喜というものの多様性だ。派手な喜びもあれば、静かな満足感もある。志賀直哉や向田邦子の文章から感じ取れるそれぞれの人生観は、五十八年を生きてきた自分自身を静かに省みさせてくれる。特に吉田健一の「食べものの話、又」など、日常の何気ない瞬間に隠された喜びを丁寧に掬い上げる筆致は見事だ。 何より筑摩書房の文庫本としての装幀が美しい。カバーの装画も品があり、毎日通勤の電車で開くたびに、この本を選んでよかったと思う。一人称という個人的な視点で綴られた文章だからこそ伝わる、人生の豊かさや深さが詰まっている。世の中の流行ばかり追っていた自分にとって、こうした時間を作ってくれる本は本当に貴重だ。

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