日本を棄てた日本人

日本を棄てた日本人

石戸谷滋

出版社:草思社 出版年月日:1991/06/01

草思社 | 1991/06/01

4.00
本棚登録:3人

みんなの感想

感想

日本を出た人たちの人生を追うドキュメンタリー的なエッセイ。1960年代以降にアメリカへ渡った「新一世」と呼ばれる日本人たちが、なぜ故郷を離れたのか、カリフォルニアで何を求めたのかを丹念に取材している。 読んでいて感じたのは、著者の視点が比較的中立的で、移住者たちを単純に美化したり批判したりしていない点だ。むしろ、彼らの選択肢を通じて当時の日本社会の息苦しさが自然と浮き彫りになる構成になっている。その点は興味深い。 ただ、個人的には「可もなく不可もない」という印象が正直なところ。インタビューや事例紹介は充実しているのだが、それらをどう解釈するかは読者に委ねられている感があって、もう少し著者の深い考察があれば、より引き込まれたかもしれない。社会学的な分析と人間ドラマのバランスが、どちらかといえば前者に傾いているような気がする。 気軽に読める本ではありますが、何か大きな発見を期待していくと、少し物足りなさが残るかな。

感想

年を重ねると、人間にとって「場所」というものの意味が段々と見えてくるようになる。この本を読んで、そのことを改めて実感した。 高度経済成長期の日本を後にしてアメリカに渡った日本人たち。彼らは決して貧困から逃げたわけではなく、金儲けだけが目的でもない。では何が彼らを動かしたのか――著者がその問いを丹念に追っていく様子が素晴らしい。カリフォルニアという特殊な地で生きる「新一世」たちの軌跡を通じて、浮かび上がる当時の日本社会の息苦しさ、そして彼らが本当に求めていたものが何だったのかが、じわじわと読み手の心に沁みこんでくる。 自分たちの時代、サラリーマン化した社会で息苦しさを感じていた人間は少なくなかったはずだ。この本はそうした時代の空気を、海を渡った人たちの眼差しを通して鮮烈に映し出している。エッセイとしての質の高さはもちろん、読んでいて自分自身の人生についても考えさせられる、そんな一冊だった。

ブクログからブクマへ
かんたん引っ越し

読書記録や感想をそのまま移行。
数分の準備で、ブクログの本棚をブクマへ。

詳しく見る
ブクログからブクマへの引っ越しイメージ