てつの本棚
ヒポクラテスの悲嘆

ヒポクラテスの悲嘆

中山七里 祥伝社 2026年10月9日

感想

法医学という視点から現代社会の課題を鋭く切り込む、興味深い一冊でした。 引きこもりと家族の関係という、いま教育現場でも無視できない問題を、法医学ミステリーの枠組みで描いている点が秀逸です。光崎教授が遺体から導き出す真実のプロセスは、単なるトリック探しではなく、亡くなった人物の人生と家族が抱える葛藤を浮き彫りにしていく。その丁寧さが、この作品を単なる推理小説以上のものにしています。 連続して発見されるミイラ化遺体という不気味な設定も効果的で、引き込まれるようにページをめくり続けました。科学的な知識が随所に織り込まれているのに、決して難しくなく、読みやすいのは執筆の巧みさでしょう。 シリーズ五作目ということで、キャラクターの信頼感も厚く、今回初めて手に取った方でも十分楽しめると思います。社会派でありながらエンタテインメント性も兼ね備えた、バランスの良い作品。気軽に、でもしっかり考えさせられる読書体験ができました。

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