取調室のハシビロコウ
時事通信出版局 | 2026/01/07
みんなの感想
日本の刑事司法制度の問題点を、これほど生々しく浮き彫りにした本は珍しい。弁護士という職業にありながら無実の罪で逮捕された著者が、57時間の取調べと250日の勾留という非人間的な状況にどう向き合ったのか。その記録は単なる告発ではなく、私たち一般人が司法に対して何を問うべきかを問い直させてくれる。 特に印象的だったのは、権力を持つ検事が行った幼稚とも言える人格攻撃の数々だ。中学時代の成績表を持ち出すなどという行為が、実際に行われていたという事実に、正直なところ目を疑った。これが先進国の法治国家で起きていることなのかと。 著者の黙秘を貫く矜持と、それでも家族への想いが揺らがない様子は、非常にドラマティックでありながら、あくまで自らの経験に基づいた誠実な記述であることが伝わってくる。人生経験を積んだ読み手ほど、この本が問いかけるものの重さを感じるだろう。制度の不備と改革の必要性について、深く考えさせられた一冊である。
実在の冤罪事件を基にした作品ということで興味を持って手に取りました。弁護士という知識人が不当な取調べに直面する様子は、確かに衝撃的です。検事による人格否定的な尋問手法、長期勾留による精神的苦痛、そうした現実が日本の司法制度内で実際に起きているという事実は重く受け止める必要があります。 ただ、正直なところ物語としての広がりに少し物足りなさを感じました。取調べシーンは生々しく、その緊迫感は伝わってくるのですが、家族との関係性や心情の変化をもっと掘り下げてほしかった。また、法曹関係者としての視点からの社会批評的な観点ももう少し欲しかったというのが本音です。 管理職として組織内の不正や圧力と向き合う機会も多いので、権力構造の問題には敏感です。その観点からは学ぶべき点が多い一冊ですし、日本の刑事司法制度について考え直すきっかけにはなります。でも、読み物としての完成度という点では、個人的にはもう一歩という感じですね。
実話をベースにした事件報告書という珍しい形式の作品ですね。弁護士という立場にありながら、突然逮捕された主人公の経験が淡々と記されています。 医療の現場で患者さんと向き合う仕事をしていると、権力や制度に翻弄される人間の姿が他人事とは思えません。この作品で描かれる取調べの実態や勾留生活の過酷さは、司法制度の問題を考えさせられました。検事の不当な言動の数々には、正直なところ怒りを感じます。 ただし、評価としては「可もなく不可もない」というのが正直な感想です。内容は重いテーマなのに、叙述が淡白で引き込まれにくい部分があります。もう少し丁寧に心情や葛藤が描かれていたら、より胸に迫るものになったのではないでしょうか。事実を伝えることに重点が置かれすぎて、読み手の感情に訴えかける力が弱い気がします。 権力に立ち向かう一個人の記録として、読む価値はあります。社会問題への問題提起としても意味深い一冊。ただし、多くの人に強く薦めたいかと言うと、そこまでではないというところです。
話題になっていたこの本、ようやく手に取ることができました。弁護士が無実を主張し続けた取調べの実体験を綴ったドキュメンタリーとのことで、どんな内容か気になっていたんです。 読み始めて驚きました。250日間の勾留という過酷な状況の中で、一個人がどのように尊厳を保ち続けたのか。その葛藤がリアルに描かれています。特に、検事による理不尽な取調べの手口には、法曹界にいた著者だからこそ見えた問題点が明確に示されていて、法治国家として考えるべき課題が浮き彫りになっていました。 単なる被害者の告発本ではなく、日本の司法制度の深刻な課題を投げかける重要なドキュメントだと感じます。会社員として日々働く身としても、普通の夫であり父親である一人の人間が、不当な扱いにどう立ち向かったか、その心理描写に引き込まれました。 現在進行中の課題を扱った本として、多くの人に読んでほしい一冊です。
新聞で見かけた記事が頭に残っていて、思わず手に取った一冊。弁護士という社会的地位のある人が、逮捕・勾留という極限状態でどう向き合ったのか—その実話が詳細に綴られています。 正直、最初は重い話だなと構えていたのですが、読み進めるにつれ引き込まれました。57時間の取調べという時間のリアリティ、検事の言葉の暴力、250日間の勾留で家族に会えない苦しみ。それでも主人公が黙秘を貫き、自分の尊厳を守ろうとする姿勢には心打たれました。 同じ男として、一児の父親として、もし自分がこんな状況に置かれたらどうするだろう...そう考えずにはいられません。法治国家の日本でこんなことが起きているのかという驚きもありますし、司法制度への信頼が揺らぐ思いもします。 気楽に読む本ではありませんが、実話だからこその迫力があります。自分たちが当たり前だと思っている権利や尊厳について、改めて考えさせられる良い本だと思いました。
話題になっていたこの本、ようやく手に取る機会がありました。弁護士という社会的地位のある人物が、突然逮捕され、長期勾留される—その過程で何が起こるのか、という実話です。 何より驚いたのは、取調べの現場でこんなことが本当に起きているのかということ。検事による罵詈雑言、人格を貶める言動。法を守る側の人間がここまで…という衝撃が走りました。同じ年代の女性として、自分たちが社会で見えにくい不公正に晒されている現実を改めて認識させられた感じです。 江口さんの徹底した黙秘という選択、それに至るまでの葛藤と覚悟。家族との別離の苦しさ。どうしようもない状況の中での精神的な闘い。著者の冷静で率直な筆致が、むしろ事態の重大さを引き立てています。 現代の日本の司法制度について深く考えさせられる一冊です。人ごととは思えず、背筋が寒くなりながらも、一気読みしてしまいました。多くの人に読んでほしい本だと思います。
実話に基づいた本書は、刑事司法制度の根幹に関わる重大な問題を浮き彫りにしています。弁護士という社会的地位を持つ人物が、事実無根の疑いで逮捕され、250日間の勾留という極限の状況に置かれるという設定だけで、既に読者の想像力は掻き立てられます。 著者が詳細に記した取調室での経験は、単なるサスペンス的興味を超えて、司法制度における被疑者の人権、検事の取調べ手法の妥当性といった根本的な問いを投げかけています。論理的にこれらの問題を追究しながらも、一個人の尊厳をかけた闘いという人間らしさが失われていない点が秀逸です。 人文・思想書の読み手として、制度批評という側面と、個人の葛藤を描くエッセイ的側面が融合した本書の構成は、大変バランスが取れていると感じました。社会人として日々の業務に従事する中で、私たちが当然と思い込んでいる「司法」という機構について、改めて思考を深める契機となる良著だと思います。
日本の司法制度の闇に光を当てたドキュメンタリーノベルだ。弁護士という社会的地位のある人物が、根拠のない容疑で逮捕され、57時間の過酷な取調べと250日の勾留を強いられる。その苦難の記録は、単なる個人の悲劇ではなく、わが国の刑事司法制度の構造的な問題を浮き彫りにしている。 筆者は淡々とした筆致で事実を積み重ねていくが、その冷静さがかえって検事の言動の不当性を際立たせている。中学時代の成績を引き合いに出す子ども扱い、罵詈雑言──こうした行為が許容されてきた風土への怒りが静かに伝わってくる。 自営業者として、いつ自分たちも同じような理不尽に晒されるかもしれない、そんな不安を抱きながら読み進めた。権力の暴走に対する個人の尊厳をかけた闘い、その記録は多くの日本人が読むべき一冊だと思う。制度改革を促すためにも、この問題はもっと広く認識されるべきだろう。
実話に基づいた重大な事件を扱っているだけに、より深い思考の余地を期待していただけに、その点で少し物足りなさを感じました。 江口さんが取調べで受けた人権侵害の実態を描くこと自体は重要です。しかし本書は事実の羅列に終始してしまい、この事件が日本の司法制度や尋問慣行に何を問いかけているのか、読者に考えさせるための視点や構成がもう一段階深まっていないように感じます。 人文系の読者として期待するのは、単なるノンフィクションの臨場感ではなく、制度的な問題への根本的な問い直しです。弁護士という専門職にあった著者だからこそ、法的観点からのより厳密な分析や、構造的な批評があってもよかったのではないでしょうか。 もちろん、このような不当な扱いを受けたことを世に知らせること自体の価値は認めます。ただ、より洗練された論述と、読者の思考を促す構成があれば、より説得力のある一冊になったと思います。啓発的な意図は伝わってきますが、その伝え方に工夫の余地があるというのが正直な感想です。
衝撃を受けました。タイトルの「ハシビロコウ」という不思議な言葉に惹かれて手に取ったのですが、こんなに深い実話だとは。 弁護士という社会的地位がある人が、理不尽な取調べにどう向き合うのか。その過程がとても丁寧に描かれていて、ページをめくる手が止まりませんでした。特に、検事による人格否定的な取調べの詳細が出てくる場面は本当に息が詰まります。中学時代の成績表を持ち出して揶揄するって...こんなことが日本の司法の現場で起きているのか、と驚きました。 エンジニアとして論理的に物事を考える癖がある私だからこそ、この本の主張がものすごく響いたんだと思います。事実と証拠に基づかない取調べの矛盾が、淡々と記述されていく様が、むしろ検察側の異常さを際立たせていて、非常に説得力がありました。 家族への思いも含めて、尊厳を守ろうとする姿勢に感動しました。「普通の人」がこういう状況に置かれたら、という恐怖と、それでも闘い続けた勇気が伝わってくる。気軽に読める本ではないけれど、本当に読んでよかった一冊です。