読書メモの本棚
感想

『三日間の幸福』が話題だったから、この最新作も試してみようと思った。著者の人気が続いているようだし、文庫化されたのも機会だと感じてね。 ところが、読んでいてどうも引っかかるものがあるんだ。記憶の改ざんという設定は興味深いし、架空と現実が交錯する世界観も悪くない。だが、話が進むにつれて、登場人物の心情描写がどうも底浅く感じられてしまう。青年の戸惑いや葛藤が、もっと深く掘り下げられてもいいのではないか。 そして何より、恋の物語としての説得力が足りないように思う。出会う前から続いていて、始まる前に終わっているという謳い文句は詩的だが、実際に読むと、その背景や理由がはっきりしないまま話が進むところがある。80年も生きていると、こういう曖昧さは若い読者ほど好まれないことが分かる。 著者の才能は認めるが、これはやや期待値ほどではなかった。もう少し丁寧に物語を作り込んでほしかったというのが正直なところだ。

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